佐久間裕美子さんとの対談 eatrip seed club #9 の記録
2月20日に野村友里さんが主宰されているeatripsoilにて開催された、eatrip seed club #9 佐久間裕美子さんとお話させていただいた内容が、eatripsoilのインスタグラムで公開されました。こんなに長い時間のこと、を、書き起こしてくださり感謝しかありません。どれだけ時間がかかったことでしょう。感謝の気持ちもこめて、私たちもシェアさせていただきました。少し長くなりますが、お時間あるときに読まれてみてください。そして何より、このような時間を作ってくださった野村友里さんには、感謝しかありません。ありがとうございます。
開催された2/20(木)は今ほどコロナウィルスの問題が拡大しておらず、このような事態になることは全くも想像していませんでしたが、そんな中お話を頂きました文筆家・佐久間裕美子さんと八百屋warmerwarmer・高橋一也さんのお話「種物語 古代から未来へ」は、今、改めて振り返るといろいろと考えさせられることがたくさん含まれています。お時間がある時に読んで頂けましたら幸いです。
《まずは、野村友里さんのご挨拶からスタート。》
野村さん:
開催されたeatorip Soilは、店舗名にもあるように土がテーマ。
±(プラスマイナス)って書いて土と読みますが、ちょっとフラットになって何が一番欲しいかを考えた時に、何も考えない時間とゼロスタートが良いと思うことがあります。レストランをやらせてもらっていて、生産者さんしかり、あとはどんな環境で、もっと行くと種とか土とかにもどんどん興味が膨らむのですが、そんなことも含めてまずは土から考えはじめたいなと思い名付けました。
奇しくもeatrip Soilは、高層ビルが見える東京のど真ん中。ビルを見ながらこの先どっちの方向に行くのかなと思った時に、土っていわゆる更地。ゼロから色々また自分の暮らしだったり、街を構築するイマジネーションが湧いていいなと思っていて、今まで出会ってきた食材を販売する一方で、一緒になって考えたり体験するような場所を設けたいと思いseed clubを開催しています。今回、佐久間裕美子ちゃんに声をかけさせてもらったのは、普段ブルックリンに住んでいていつもいろんな発信をしているんですけれども、外から見た側面からのお話をしてもらいたいなと思って…。最近、著書も出たばっかりなのでそちらの話かなと思っていたら、「種の話がしたい」ってことで。種はseed clubってつけているくらいだしすごく温めていたんですけど、こういう機会にぜひお話を聞きたいなと思い、以前からお付き合いのある高橋さんに来て頂いたという経緯になります。
《そしてここからお二人にバトンタッチ》
昨年の夏に野村さんと広島に行く機会があり、そこでもちょうど種の話になったという佐久間さん。
今ようやく種の問題が映画になったり本で書かれたりする中で、佐久間さんも真剣に勉強しないといけないなと思っていたところに野村さんからトークのお話があり種の話をリクエストしたそうです。
《今回のお話のお相手である高橋さんですが…》
2011年から種を守る活動を開始。
レストラン・キハチで料理人をしていた時に、周りの人からシェパニーズのアリス・ウォータースさんに会った方がいいと勧められ、サンフランシスコに。その後、アリス・ウォータースさんのオーガニック運動を勉強し、表参道に本店があるナチュラルハウスに入社して13年勤務。そんな中、種を守っている農家さんに出会われたそうです。800年前から続く大根を守っていらっしゃる方でこの種が失われることを聞き衝撃を受け、種の大切さを伝えたいと発起。最初は表参道で、古来から続く野菜の引き売りからはじめて今に至るそうです。
《ここから本題に》
佐久間さん:
種の特許とか大企業に崩壊させられてしまうじゃないかってことがよく言われるんですけど、一方で、こうやって守っていかないとまずいっていうことがだんだん伝わりはじめているような気もするんですけど、2011年から活動されていてその辺はどう思われますか?
高橋さん:
すごく世界が変わったなと思います。最初は種が大事だと言っても皆さんに無視されるしすごく苦しい時期があったんですけど、今AIとかスマート農業とかどんどんバイオテクノロジーっていう世界が広がってくると、その真逆の世界っていうか「命とは何か」、「野菜とは何だろう」、「人間とは何だろう」っていう根源的な問題に触れるようになってきました。そうした時に、今、世界的に種というものがすごく注目されるようになってきたんだと思います。
佐久間さん:
震災を経て空気で流れてくるものや放射能とかに対する危機感や口に入れるものに対する危機感がすごく強くなって、それでみんな多分口に入れるものについて考え直した人も多いと思うんですけど。私もともと住んでいる場所がブルックリンの中でも発ガン率が高いところなんですよ。80年代ぐらいに石油タンカーの事故が起きて石油が流出してそれがいまだに残っているっていうのと、近所にもう使われていないプラスチック工場があって、かなり汚染されているらしいんですよ。うちの近所はもともとはそんなんじゃなかったんだけど高級化したエリアで、古い工場とかを買って建て直すみたいなことがすごい多いんだけれども、そこだけは余りにも汚染されてるから放置されているんですね。最初は全然危機感を持ってなかっただけれども、色々調べていくとこれは結構やばいところに自分は住んでいるなと。とは言え、自分はそこの家も大好きだしってなった時に、これって私たちが生きている世界の縮図だなって。山奥に住んで綺麗なものだけ食べるっていうことができるんならいいんですけど、やっぱり経済活動もあるし、自分の表現活動とかもある中で、その辺の折り合いというのがすごく難しいと思っているんですけど、どうですか?
高橋さん:
ブルックリンとか、今日もそうですけど、この都会の中で命の話をするっていうのはやっぱり大事なところだなと。都会だからこそ、私たちは「命」とどう向き合っていくのかとか、都会だからこそ「どう食べていくのか」とか、土も含めて、アスファルトに埋められてしまっている土の上で生活している私たちとして「どう生きていったらいいんだろうか」っていう、付き合い方をもう一回模索し始めていると思います。我々が誰も通ったことのない道を、今、行っているような感覚になっていますよね。今、たぶん。メキシコの方からは、マヤ文明で守っていた在来作物がどんどん遺伝子組換えに変わってきているとか、インドネシアでも、山に行けば先住民が在来を守っているけど、街中は全部F1種の野菜になったという話も聞きます。
佐久間さん:
ちなみにわからない方のために、F1種っていうのは…?
高橋さん:
F1種っていうのは、「ある目的をもって人工的に改良した種の野菜」なんですよ。在来作物というのは、自然にずっと種採りしている野菜で自然の中に昔からあって、その土地の環境と共存しています。
ちなみに、これがF1種のカタログ、種カタログなんですけど、例えば「さつきみどり」っていうきゅうりがあるんですけど、見ると24cmって書かれてるんです。「よしなり」は21cm。これを命って考えた時に、種の時からすでに生まれる前からあなたは170cmですよって言われている、そういう世界なんですよ。
佐久間さん:
すごい世界ですよね。
高橋さん:
でも僕は全然悪くは思ってなくて。この野菜が必要な人もいるし、それによって経済も成り立っているので大事だと思うんですけど。70日で育てる野菜、例えばホウレンソウ。これは企業がデザインした野菜です。非常に収量もいいし、日持ちもするし、輸送費も浮くし、やっぱりロスにもならない。そういう意味では経済的には素晴らしい。
佐久間さん:
経済として素晴らしいだと思うんですけど、例えばこういうことになった背景には、ちゃんとした形でないといけないとか、ちょっとでも傷がついてたらダメだとか、輸送が安定しているとかってことですよね?
高橋さん:
野菜が商品になったですよね。野菜は「商品」じゃなくて「食べ物」だと私たちはいつも言っていて、在来作物は「食べ物」だと思うんです。でも、商品としてみるから利便性だとか、安く買いたたかれたりとか。でも命、「食べ物」として考えたら価値はもっとある。この野菜は、「商品」なのか「食べ物」なのかどっちなんだろうっていつも考えています。
佐久間さん:
高橋さんの中では、同じようなていでも命なのか商品なのかっていうのは割と明確なんですね。
高橋さん:
今日お配りした資料では分けてるんですけど、一緒に考えてしまうと今の社会システムにどうしてものれないっていう理由が出てくるので。それを無理くりのせるんじゃなくて分けて考えようとしています。
佐久間さん:
私、子供の頃とかは、傷ものの野菜とかも売られてたような記憶がある。
高橋さん:
それは食べ物だったんですよ。商品としては傷ものはダメなんです。
佐久間さん:
いつぐらいからそうなったんですか?
高橋さん:
戦後、F1種の野菜が出てきた頃からですかね。おじいちゃん、おばあちゃんの農家さんとおつきあいさせて頂いていて、「昔は食べものがなかった」ってみんな言うんですよ。食べるものがないから、食べられるものを大事にしてきた。自分たちが大切にしていた気持ちをあなた達は受け継がなきゃだめだって。でもこうやって、いろんな食べ物が商品として出てくると、新しいものと古いものにわけて考えてしまい、また、食べ物が商品になってしまって、全体的に食べ物の価値が下がってきてしまう。それはちょっとまずいんじゃないかなと。だから、今はどう食べ物と向き合っていくかってことを修行している感じです。
佐久間さん:
今って食の話をしているとバイオ、バイオっていうじゃないですか?
地球全体に食べ物が行き渡らなった時のためにバイオの研究が進んでいるんだよって。
ちょっとマリファナのことを思い出すんですけど、マリファナが危険ドラッグとなったのはここ70年ぐらいの話で、昔は全然治療とかに使われていたんだけども。ずっとダメだったのがようやく解放されようとしてるわけなんです。その中で、例えば糖尿病の人だったらこれぐらい、パーキンソンの治療だったらこれぐらいの割合が良いみたいなところまで研究が進んできて、品種改良っていう言葉が正しいのかわからないんですけど、いろんなことがされていてそれがどこまでいいのかっていう縁引きみたいなものが自分でもわからなくなることがあって。野菜の世界だとバイオが今どんな風に進んでいて、それについてはどう感じていらっしゃいます?
高橋さん:
ゲノム編集とかこれから出てくることに対しても僕は理解できるんですよ。
ゲノム編集と言いつつ、「命」とどう向き合うかっていくかという話にもなってくると思うんです。今回佐久間さんの本を読ませて頂いてすごく感動したのは、アメリカではマリファナとどう向き合うかっていうことを徹底的に話し合うじゃないですか?どうしても日本って自家採種禁止だとか法律の話ばっかりになるんですよ。食べ物と自分たちはどう向き合うのかっていうことを真っ向議論する場がなくて。遺伝子組み換えとどう向き合うか、ゲノム編集の野菜とどう向き合うのかっていう、我々が経験したことがないことをちゃんと話して、次の世代に受け渡すっていう役割があると思っているので、本を読ませて頂いてやっぱりアメリカってすげーな、議論をして国が変えられるんだなあと思って。
佐久間さん:
マリファナ解放運動って禁止になるとともに始まっているんでもう何十年と戦っていて、その間に亡くなった人もたくさんいる中で、医療的な効能とか予防に効くんだっていうことがだんだん議論されてきて今に至るって感じなんですけども。やっぱり日本を見ていると一番足りないのは議論かなって。まーアメリカは色々と問題のある国なんだけれども、こちらの人がこう言ったら反対の人が必ず反対だって言って、そこで意見を戦わせるっていう場があるんです。日本だとちゃんと知識を身につけている人は良いけれども、なんか漫然と生きているとどんどんくわれちゃったりとか。もちろん高橋さんみたいな方がこうやって話したり、書いたり啓蒙活動をしているんだけれども、やっぱりそれがメインストリームに広がっていくのって難しいじゃないですか?その辺はどうですか?
高橋さん:
やっぱりこう急ぎすぎちゃいけないと思っているし、積み重ねっていうものが大事かと。マリファナにしても昔は大丈夫だったものが、いきなり何かの利権だとかによってダメになる。元々人間って衣食住すべて自然から恩恵を受けてそれを知恵として色々作ってきたわけじゃないですか。それが科学だとか法律とか利権が入ってきた時に何かシャットダウンしてしまった。そこに対していろんな人たちが気づき始めていて、そこをつなぎ直そうという感覚でいるから、今自分たちがどう考えるのかっていうことが大事かと。種の活動をしていますけど、僕は大きくなろうとは思っていない。どうこの種とか命っていうものを伝えたら良いのか。もっとポジティブでもっと自由な生き方として、この種とか在来作物がいかに大切であるか、伝えられたらいいなと思っているので、そのことを常に考えています。あえてこう急がないっていうんですかね。種も急がないし、自然も急がない、僕たちも急がないし、それとどう向きかっていくのかっていうことを言葉とか明文化していくのが僕たちの仕事かなと思ってます。
講演などで色々と話をするとTPPはどうですか?、IOTとかどんどんスマート農業、機械化されていくのはどう思いますか?と聞かれるんです。その時僕が必ず「農と農業」を分けて考えようって言っているんですよ。よく旬がなくなったって言うんですけど、旬がなくなったのは農業なんです。農の世界には旬があるんです。私たちのやっている在来作物は、夏に大根なんかないし、冬にきゅうりやナスなんかないし。スーパーマーケットで収穫祭とか五穀豊穣祭りフェアとかやってますけど、心が入らないですよね。科学の力が入ってきたことで祈りもなくなった。昔のおじいちゃん・おばあちゃんたちはやっぱり食べ物がなかったから、祈ったし歌ったし、踊ったんです。一生懸命、食べ物が欲しいと神様に願ったのが祈りだったんですね。しかも祭りだった。でもそれが、戦後、科学の力で大量生産の農業の世界ができると祈りがなくなってきたっていうんです。大量生産・大量消費が農業の世界で、僕たちは農の世界。そうやって分けて考えています。
《ここで高橋さんがご用意くださった、4年前に石川県で希少食材調査をやった際に取り上げられた野菜に関する映像を皆さんと一緒に拝見することに…。鑑賞後に高橋さんから…》
高橋さん:
(希少な野菜を漬物にする様子を見た後に…)
アクを取るんですよ。今の葉物全部アクが無くて便利な野菜になったけど。昔の人たちは丁寧に時間をかけて食べ物を大事にしてきた。下処理したりして、野菜を食べ物にかえてきた。こういう野菜を見ているといろんな紐解きができるんです。農業って言うのは本当に端からだーって、効率良く野菜を収穫していくけれど、おばあちゃんの畑に行くと掻き分けながら、今日どの子を出荷しようかなって。畑の中でも成長が早い子がいれば遅い子もいる。やっぱり人間と同じように何一つ同じものが畑の中にないんですよ。本当に多様性な世界。画一化されている畑の農業と農を見た時に、分けて考えた方が絶対いいと思ったんです。
佐久間さん:
(映像に出てきた)この方たちは、農業を選択しなかったっていうことですよね?
高橋さん:
していないです。
自分たちが自給できるものを食べていてそれを受け継いでいる。
自分が野菜のバイヤーをしていた時に何を見なさいって言われたかというと、その土地の風と土。北海道から沖縄まで全部土が違う。そしてその土地に流れている風が違う。だから、水も違うので多様性が。その土地の風と土(風土)を大事にして、適地・適作で土着した色んな野菜がある。それが今日配った資料にある1214品種、もっと言えば2000品種ぐらいは日本にはあると思います。(画像をさしながら)これが大根です。赤になったり緑になったり…。
《そして、先ほども触れていたアリス・ウォータスさんの話に再びなり。》
佐久間さん:
私が最初に書いた本が「ヒップな生活革命」っていう本で。それで食の最前線の人たちの話を聞いてたら、どうしてもアリス・ウォータースさんに話が聞きたくなって。一年ぐらいコンタクトを取り続けたらようやく話をしてくれることに。その時に私がやっていることは日本人がみんな昔にやってたことだよってことをちゃんと書いてね、約束してねって言われて。こういうお話とか聞いていても、どうしてこんな画一な野菜だけが流通するシステムになっちゃったんだろう?って。
高橋さん:
都市化でしょうね。私たちは都市化と効率化を求めた。昔、日本は7000万人だった人口が、1億2000万人になった。戦後、人口が増える中で、食べ物がなかったら生きていけない。だから収量があるように野菜をデザインしF1種の野菜を作ったんです。全然正しいんですよ。
佐久間さん:
全員を食べさせるためにね。
高橋さん:
そうなんですよ。
だから私たちは、今、生きてられるし、すごくその恩恵を受けている。でもこれからの日本の社会において、人口が減る中で、自分たちがこういう画一化に向かう社会の中でこのまま生活をしていくのか?戦前・戦後、種を守り食べることに向きあっていた頃には畑に神様がいると考えていた。もう一回そうした想いやコトを思いながら、改めてテクノロジーの世界を歩むべきなんじゃないかなって。そういうメッセージが込められている気がしますね。
佐久間さん:
私、過去にベジタリアンになることを二回ぐらい失敗してるんですけど、それは当時のアメリカのスーパーで買える野菜が全然美味しくなくて。でも今ベジタリアンになれた理由は、すごく野菜が美味しくなったからだと思うんですよね。それってやっぱり、高橋さんみたいな方とか、現場の方たちがそういうことに気づいて違うやり方を模索した結果だと考えても大丈夫ですか?
高橋さん:
いや、僕たちは何もしていないんですよ。種や野菜たちが僕たちを動かしいる感覚なんです。
この野菜を食べると複雑な味がするので、みんなぞわぞわする。そういう違いをまだ僕たちは感じることができるので、それを残すことができる。複雑性っていうのは科学の力では作れないくて、やっぱり命あってのもの。そういう意味で残ってきてますね。
《続いて、高橋さんがご用意くださった野菜や種のご紹介に。》*撮影した写真あるので使用させていただく
高橋さん:
これはみなさんよく知っている野菜。種がたくさんついています。
これは水菜なんです。ここに花が残っていますけど、花が散って鞘ができて種ができる。
こういう循環なんですね。
これは蕪です。蕪は小さい種が土に入って土の中の栄養を全部吸収して大きくなる。その後、種を実らせるための栄養を私たちが蕪として食べているんです。実際どうなっているかというと、蕪も花が咲いて鞘ができる。これが命なんですね。何百年、何千年続いているわけです。これが途絶えようとしているんです。
これわかります?ここに種がたくさんついているんです。
これほうれん草なんです。私たちは、ほうれん草の若いものを食べるんです。ほうれん草も大きくなって花が咲いて種ができる。私たち先祖は大事に残してきたので、ある意味時間軸が繋がっているんですよ。
でも、農業っていうのは、人間がデザインするので時間軸が途切れているんですね。存在と時間。存在1つに対して、時間がどれだけ続いているか?でもデザインされた工業製品っていうのは、途切れ途切れなんですよ。だから、僕は農業と農って分けて考えようと。
昔の人たちはものを大事にしていたんですね。昔の人は買い換えるってことをしない。メンテナンスするですよ。修理をするんですよ。でも、なぜか僕たちは捨てるってことを覚えてしまったんですね。しかも新しいものに買い換えるっていうが価値として考えの中に入ってしまっている。だからもう一回ものを大事にする。続けていくってこととどう向き合うか。僕はそういう意味で種を扱っていて思います。
全てに命があってそれとどう向き合っていくか、野菜を通じて色々と勉強させてもらっています。
佐久間さん:
そうですね。野菜だけじゃなくて機械とか人間が生み出したものであっても寿命がある時もあるけれども、できるだけ長く使いたい。日本語で言う「もったいない」っていう言葉が、一時世界で流行ったんですけど、それは日本では貧乏くさいって…。
高橋さん:
作ると生まれるの違いだと最近思っているんですよね。作ると生まれるって意外に違うんですよね。例えばここ(eatorip Soil)にある加工品は多分生まれていると思うんですよ。でも、工業製品的なものは作るっていう方向にシフトしているんですよ。
佐久間さん:
それが悪いっていうわけではない?!
高橋さん:
悪いわけじゃない。生んでるのか?作っているのか?いろいろなものに対してそういった視点を持つ必要があるなと思っていますね。
佐久間さん:
なんか今の話を聞いて私医療のこととかもやっぱりそうだなと思っていて。私はできるだけ漢方で治したいって思ってずっと生きてきたんだけれども、やっぱり気がつけば忘れてしまって。自分の体験談でいうと、昔、大怪我した時にオピオイドっていう依存性の大変高い鎮痛剤を飲まされて、持たせられて退院して。それからご飯の味もわかんなくなっちゃって、体重もどんどん減って。その時は本当に激痛で、仕様もなく最初飲んでたんだけれどもやっぱり人間っぽくなくなっていくんですよね。友達が来てその薬を見てヤバイって言ってくれて自分で調べてわかったんです。もちろんその西洋医学が悪いっていう話ではなくてそれがどうしても必要な時ってもちろんあるんだけれども、そこの何を食べるかとかもそうだし、どこでものを手ばなすかっていうのもそうだと思うんですけれども、やっぱりすごく価値観が求められているっていうか自分たちの判断っていうものが求められている時代なのかなって今お話を聞いてて思いました。
高橋さん:
もう感じるか感じないかなんですよ。こういう話をしても、感じる方もいれば感じない人もいる。僕はそれは正しいと思っているし、でも感じる方と一緒にやっていきたいと思ってます。
佐久間さん:
そうですよね。
いや、なんか感じるか感じないかは多分入り口の問題だったりもすると思うんですよね。
今の話もそうだけれど、うっかり全然わからないまま行っちゃってた可能性もあるなと思っているし。あと、最近でもやっぱりハッとなることがあるっていうか、すり込みっていうかね。お医者さんの言うことは聞きなさいとか、体に合わない食べ物をとか絶対あると思うんだけど、それは今のお話の中でいうと農業から出てききたものかもしれないんですけど、全部好き嫌いせず食べなさいって教えられてきたから、いまだに自分のすり込みにハッとなることがあって。でもこういうお話とか聞くと間違っていなかったんだって思ったりすんですけども。まー、入り口というか、きっかけなのかなって思ったりするんですけどね。
高橋さん:
そうですね。私もきっかけ頂いて…。
農家さんがいるから私たち生きていけると本当いつも思っているので、ありがたいですよ。本当に感謝です!
最後はお客様からのご質問をお伺いするコーナーに。
eatrip Soilでもお野菜や蜂蜜をご紹介させて頂いている青梅ファームのひでさんや、イベントの当日に店頭にてジュースの販売をしてくださったサンシャインジュースのノリさんからもご質問があるなど、会は最後まで充実した時間となりました。
《最後に》
開催後に高橋さんから以下の通りコメントを頂きましたので追記させて頂きます。
—
西洋がいい、東洋思想がいい。農がいい、農業がいい。
テクノロジーがいい。自然がいい、ではなく。
どちらにも、私たちは存在しています。
テクノロジーの中に、どう自然思想を入れるかなど、
いつも、この2つを、どうやって「重ね描く」かを考えています。
それが、僕たちのいる社会だと思います。
—
ご参加頂きましたみなさま、お話をしてくださった佐久間裕美子さん・高橋一也さんに心から感謝をいたします。